糸杉と鬼灯

眇眇四方山話

死に至る病

死に至る病

言わずと知れた、セーレン・キェルケゴールの名著のタイトルである。

死に至る病とは絶望である。名言であると思う。

ただこの言葉は、現代人の多くには彼の意図通りには当て嵌まらない事態が多いと思う。敬虔なキリスト教信者の心理的論述だからである。

同書の副題は『教化と覚醒の為のキリスト教心理学的解説』である。

もっともキリスト教信仰云々ではなく、何らかの確りとした信仰を有している人ならば通じる論説である。

カトリック正教会聖公会コプト教会プロテスタント諸派などのキリスト教は勿論として同じ筈の神を信仰するセム系宗教であるユダヤ教イスラム。その他の人格的超越存在を信仰する宗教であれば、通じるところがあろう。

しかし、信仰なくとも、死に至る病とは絶望である、と言う言葉は感覚的になんとなく同意するものではなかろうか。

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癒しと空虚

癒しが欲しい。

日々の生活に虚しさを感じる。生きる目的はないし、生きる意味も見出せない。惰性で生きる生活である。何故、「普通」の人々は生きていられるのだろうか。誰もが生きる目的を持っている訳ではないだろうし、惰性で生きている人もいる事くらいは経験則で知っている。もう子供ではないのだ。

 

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労働と生

リビドーが不足している。自発的に何かをしようとする際、気力を溜め込み振り絞らないと体が動かない。結果として休日は優に半日以上ダラダラと眠っている。

勿論、ここで言うリビドーとはフロイトの言うそれではなくユングの方である。どちらでもいいが。

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政治不信と投票率

 そろそろ第25回参院選の公示である。余り盛り上がっている感はないが。注目点は自民党の得票率/獲得議席と、れいわ新選組議席獲得の可否であろうか。以前のような保守・右翼の自公与党とリベラル・左翼の野党連合という雰囲気ではない。そして、相変わらず、国家の現状の認識と将来に対する展望の見えない選挙である。

 どこが政権を握っても変わらない、という国民感覚はさすがに薄れた様に思う。調査媒体にもよるが、安倍内閣に対する支持率は40~55%で安定している。発足時から比べれば大分下がった印象を受けるが、高い水準を維持している。しかし、それは政治に対する信頼がある事を意味しはしない。

  寧ろ、政治に対する期待感は減少していると思われる。日本の普通選挙投票率は決して高くない。2016年第24回参院選投票率は54.7%(18歳19歳の投票率46.78%)である。

 政治に対する信頼度を示すとも考えられている投票率の海外状況を少し見てみる。

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鬱と食事

 鬱になると食欲は減退する。

それが抑鬱状態だろうと、精神病としての鬱病だろうと同じである。

所詮は主観的で狭隘な経験や書物・ネットで得た知識であるが。実際、ストレス性の過食症もあるし、やけ食いもある。

必ずしも鬱状態=食欲減退という訳でもない。

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安楽と尊厳と自殺

個人的には自殺/自死を絶対的な悪とは思わない。

熟慮の上に選び取った死であるなら、その選択は尊ばれるべきである。

たとえ、それが現在的な艱難からの逃避であっても。

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太宰治『人間失格』読感

今更ながらに、太宰の『人間失格』を読んだ。

余りに有名どころ過ぎて何となく、今読まなくてもいいか、と言う感じで後回しにしていた。

 

青空文庫をうろうろしていたら、目に付いた。丁度いい機会であると思い。読み進めた。

 

人間失格

シンプルで過激なタイトルである。

社会生活を碌に行えない身からすると、共感を抱く。

 

粗筋やらは、ネットでも紙でも氾濫しているので触れるまでもない。

玉川上水で心中をした太宰の最後の脱稿作であり自伝的小説、或いは小説風遺書とも言われている。

ただ、『人間失格』自体はかなり推敲さており練りこまれた作品であり、また遺書も太宰の五十回忌直前に公開されている。

太宰の人生を鑑みれば、自伝風小説というのは尤もな分析である。

 

私は、精読した訳でもないし文学者でもない。

ざっくりした読感は、ふーん、という所である。

生涯の出来事を抽出すると恥の多い生涯どころではないが、人格的にはそこ迄ではない。

 

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